ダラー・ショックのシナリオ

外為方の改正によりそれまで為替ディーラーなどの金融機関のみ外国為替市場でFXができましたが、今では証拠金制度を使い、FX(外国為替証拠金取引)ができるようになっています。プロの元為替ディーラーがどのように為替相場を分析すればいいのかを解説してくれます。

ダラー・ショックのシナリオ

近い将来、米国ドルの経常収支が黒字化する見込みはありません。したがって、米国の対外純債務はこれからも増え続けるでしょう。また、米国経済は今後数年間借金バブルの後始末から四苦八苦する公算が高いのです。くわえて、中国が経済力で米国に追いつく時期は、目前に迫ってきました。もとより、ドルには昔と違って、金という裏打ちがあるわけではありません。そのような中、今後もドル安が続き、外国が保有する米国債の価値が一段と下落するとの懸念が大きくなれば、人々は、現在の利便性に見切りをつけ、ドルの使用と保有を断念することになります。そのとき、米国は、基軸通貨国の特権を喪失し、ドルは暴落するでしょう。これが、ダラー・ショックです。

 

 

危険水準まで下落しているドル

ドルの価値を、米国と貿易取引のある複数の国々の通貨と比較した為替レートを実効為替レートといいます。また、長期的に為替レートをみる場合、相手国との物価上昇率の差を考慮する必要があります。例えば、10年間に、日本の物価が不変、米国の物価が30%上昇した場合、市場のドル円相場(名目為替レート)が10年前も今も100円であれば、物価上昇率格差を考慮した為替レート(実質為替レート)は1ドル=130円と、物価上昇率格差分(30%)だけドル高となります。そして、この両方でみた為替レートを実質実効為替レート(REER)といいます。

 

実際に、FRBが公表している米国のREERをみると、現在、73年の変動相場制移行後の最低水準まで下落していることがわかります(図表7)。実はこれは重大な意味を持っています。すなわち、過去、この水準までドルが下落した時期は78年と95年であり、ともに為替市場においてドル不安やドル暴落リスクが強まり、米国がドルの防衛策を打ち出すことよってドルが反転しているからです。 78年にはカーター大統領がカーター・ボンドと呼ばれた西ドイツ・マルクや円建て米国債の発行の検討をも含んだドル防衛策が発動され、95年にはG7声明が秩序あるドル安を表明し、協調ドル買い介入が実施され、ドルは基軸通貨の座をかろうじて維持したわけです。